フカク、フカク、コノホコラノ、日ノ光果テルバショヘ
食糧が尽きてもう一週間になる。 水の一滴すら口にしていない。 胃液の分泌は止まりもはや空腹も感じず、 化石のように干からびた喉は息を吸うたびに痛んだが、 それでもなお死ねない。 使命を負ったこの体が、僕をこの世に縛り付ける。
消し炭色の枯れた大地を歩き続けながら、 いつも僕は空に輝く太陽を呪った。 他に呪うべきものなんて、 見晴らしの良すぎるこの世界にはひとつもなかった。
――「陽の光ある限り、お前は滅びない」
――「三百六十五の夜が過ぎぬ限り、お前は立ち止まらない」
長老はそう言った。 それはこの星を襲った巨大な災厄を滅ぼすための、 最後の希望なのだと言う。
その洗礼を受けた日を境に、 僕は勇者と呼ばれるようになった。 どうかこの世に本当の光をと、 一体何人の人に泣きつかれただろう。
死ぬこと許されぬ呪いの子供にすがることしか出来ない、哀れな人たち。 泣きたいのは僕の方だ。涙など出やしないが。
僕の旅に意味はあるのか。 災厄を倒せば、人々に道は拓かれるのか。 他の星に逃げることすら思いつかず、 生まれ育ったこの星でブルブル震えるだけの人々に 未来など作れるのか甚だ疑問ではあったが、 普通の人間のように迷ったり立ち止まったりする力は僕にはない。
やがて闇に辿り着いた。 積み重なった岩の隙間の、 何も見えない真っ黒な穴は絶望の闇そのものと言えた。 この先に僕が倒すべきものが待ち構えている。
闇は怖くない。 むしろあの忌々しい太陽から逃げられることが 僕には救いだった。
さあ、行こう。
フカク、フカク、コノホコラノ、日ノ光果テルバショヘ――