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5/0/0/3
黙祷剣、黙祷剣、紫電剣、導来剣0、黙祷剣、胎胎剣
シンガブロッダの末裔。
一族の系譜は大災害よりも前から残るほどに長い。
かつて畏れられた異様な運動能力も薄まり、
彼女の父は帯剣者ではあるものの科学者である。
彼女は一族のことを昔話のように聴いて育ったが、
同時に「剣」が自分や世界の為になるものではないことも強く教えられた。
しかし、彼は一族のことも帯剣不帯剣にも興味を持たず、
ただ大災害の頃の、昔話を好んでいた。
やがて16になるアリスは自ら選ぶことなく剣士となった。
剣の使い道に興味を持ったことはない。
アリスは、この状況をそういうものなのだ、と思うことにした。
しかし力のない彼女には、重い剣を自ら持つイメージはできなかった。
イメージできるのは、ただ彼女が憧れた剣士たちだけだった。
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本キャラクターは作者の意向により二次創作が禁じられています。
5/0/0/3
導来剣0、黙祷剣、胎胎剣、黙祷剣、黙祷剣、コウ速剣
アリスは初戦零回戦目の日、斬り合いを見るのを拒んでいた。
元々争いは好きではない。
剣道部の模擬試合も、毎回0/6/0/2/高高か、
5/0/0/4/速魔魔魔魔で出場するタイプ。
普段真面目に振る舞い、落ち着いた印象を見せる彼女だが、
争いごとになるとやる気が全く起こらないのだった。
今回の戦いも、一度、紫電が剣士として闘うのを観たいから紫電剣を。
自分が傷つくのが嫌だから、胎胎剣を想像した。
戦いが怖い?そうかもしれない。
誰かを傷つけたくない?そうしないに越したことはない。
最も大きな理由、それは、力によって相手との優劣をはっきりさせることに
興味がなかったからだった。
彼女は自分で気づいていなかったが、彼女は自分以外の生徒を蔑んでいた。
自分が優れているということに疑いを持たなかった。
謙虚に振舞うのはそういう礼儀だから。
真面目に学ぶのはそれが正しい学生だから。
規範に則れば、即ち自分は誰からも蔑まれない。
それが解らないのか、若さだと主張することで許しを得られることへの甘えか。
他の生徒は必ずしもそうではない。嫌悪感を持った。
嫌悪感を持ったが、誰かと険悪になることで黄金のルールを蔑まれたとしたらどうか。
もっとも安易で得易い城壁を、そのような理由で崩すメリットがなかった。
しまい込む。奥へ追いやられた嫌悪感は、見えないほど押し込まれる。
小さくなったそれを、アリスは忘れるが、取れないほど奥にそれは潜む。
だから、「表面的には穏やかで非のない、目立たないがしっかりとした学生」。
しかし状況は一転する。
十津川の破壊剣が星水の骨を折った。聴いた事の無い悲鳴がアリスの鼓膜を振るわせる。
倒れて断続的に痙攣を起こした星水が、それでも必死に黙祷し、星霜剣を起動する。
星水には解っているのだ、必殺の戦法がもう叶わないことは。
次の呼吸で、十津川の衝撃剣が、星水の、
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それからもずっと、人によっては血を流さずに試合が終わることもあったが、
目の前でありとあらゆる方法で人が死んだ。
利根川曰く死んでも大丈夫とはいえ、人が死ぬのだ。
隣で見ていたカリナや長ランがアリスに声をかけるが、アリスは呆然としたままだった。
やがて試合が終わったころに、B5の簡素なプリントが配られる。
目を通す。隣を見る。
「何て言っていいのかわからないけど、頑張ろうね、って言うのもちょっと
どうかと思うけど…えっと」と言い出しかねないカリナの顔があった。
無言でアリスは席を立ち、「気分が悪いから先に休んでるね」と普通の声を出して、
少し微笑んで部屋へ戻った。
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カリナの構成も一度目にしてすぐに覚えた、というよりも、忘れられなかった。
このままでは負ける。血を流さずに負けることができる、それが救い。
救いか?
思いを巡らせる。
それは救いでは決して、ない。負ける。負けることは死ぬことと同じ。
目の前で繰り広げられた死と全く等価の敗北。
アリスは自分の築き上げてきた、脆い城塞の瓦礫の上でひたすらに、
無いなら死ぬまでという現実を突きつけられた、戦う意味について考えた。
血筋か、それともあらゆる死を観たからか。
この戦いに100%の勝ちがないこと、お互いの読み合いが混ざった複雑な一戦であること、
そして、自分が勝ち筋を真剣に悩んでいることに彼女は気づいた。
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5/0/0/3
導来剣0、黙祷剣、儀式剣1、紫電剣、黙祷剣、黙祷剣、胎胎剣
私は戦闘後、残り火と石畳の上で立ち尽くしていた。
確かな揺らぎと、ビルディア特有の希薄さの欠如。
それを感じ取ったのは、僅か片平、鯛良、利根川のみ。
あのアリスは確かに残響剣だった。
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夜。
「アリス、ちょっといいかな」
アリスは次の相手の遠里小野の構成を見つめていた。
数秒後、はっとした様子で振り返るのを私は見つめていた。
アリスは少し困ったような顔で笑って、当たり障りの無いよう、
今日はお互いが死ななくてよかったね、と言った。
「灼ける空より」
言うやいなや、アリスが飛びのき高速のビルドを行う。
明らかに動揺した顔つき。きょろきょろと動く目。
「冗談だよ、アリス」
明らかに疲弊した顔つきが露になってしまったのを、気にしていたのか。
アリスはビルディアを破棄すると、へたり込んだように座り、つま先を見つめていた。
私は隣に座るとゆっくり、話したいことがあるから来たと伝えた。
「よく聞いて欲しいんだ。
私はどうしようもなく心が弱いんだなあって、この修学旅行で思ったよ。
ね、アリス。あの時コウそっくりになっていたの気づいてたよ。
アリスも同じだったんだね」
「…何のことだかちょっとわからないよ」
息を吐くような声で答えた。
「残響剣、って言っていいのかわからないけれど、
『以下の剣士をビルドする。味方パーティ側の基本登録剣士』。
アリス、本当は戦う気がなかったんじゃないかなって、思ったんだ。
あのコウは確かに姿を変えていても、不安げに目を動かすあなたそのものだった」
すうっと息を吸う。
「私はアリスの傍に居るよ。また元気になって、
あの真っ直ぐな目で見てくれるようになってほしい」
私は少し勇気を出して、金色の髪を撫でた。
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片平カリナが去った後私は、あのときの感覚を思い出していた。
すうっと血の気が引いて、その後明らかなオーバースペックが私の中で作られて行く様。
両手に持った短刀の温度。
そして、全てが終わった後に私が私に溶けていくあの感触。
薄々気づいていた。私は途心の積み方が、人同様に出来ないこと。
―――私そのものが弱いことに。
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翌日、再び石畳の上に昇ったアリスは、長身の女子を見上げるように見つめた。
「おりのさん。よろしくおねがいしま」
奔流。防衛機制が神経から剥離する。既にそれはビルドですらなかった。
「す」
既にアリスの途心の九割は、無意識の自衛本能が支配していた。
かつてこの繁茂した生命の、全ての原点だった一人の剣士。
希薄で脆弱なアリスの魂はその形を取りつつあった。
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5/0/0/3
導来剣0、黙祷剣、黙祷剣、黙祷剣、儀式剣1、黙祷剣、残響剣、紫電剣
不正な参照を含んだ紫電のビルドを行った私は、
勝つことでのみ生き抜くことが出来た、いつかの戦いを知った。
引き換え、実力差や優劣が決まるというだけの、
いわば形式的な戦いに一喜一憂していた私はなんだったのか。
それともこれは道徳の授業か何かで、もしもいつかの戦いと同じようになった時、
私たちはこうすることでしか生き抜けないという実感を与えたかったのか?
そんな風に、客観的に自分の弱さを見つめなおすことが出来たのは、
ただ強かったあの剣士のお陰だった。
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「よろしくお願いします」
柿野が微笑む。
アリスは柿野に対し、戦闘前に一度だけ会話を持ちかける。
「…戦闘にも、基礎能力にも秀でたあなたも気づいている筈」
柿野は静かに頷いて、しかし特に同様もなく返答する。
「解ってたわよ、でも性能的には反則というわけではないからね」
アリスの細腕には、明らかに両手用の洋剣が二振り握られていた。
「私はもう、私を失わない。私が相手をする」
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「一度意識して残響剣を使ってみたらどうかな、自分のことがよくわかるはずだよ」
そう言われ、渡された一振りの剣。
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5/0/0/3
残響剣、儀式剣1、爆炎剣、爆炎剣、黙祷剣、黙祷剣、導来剣0、黙祷剣、先行剣
「苦しい?」
「どんな夢を見る?」
「譲れないものはある?」
「本当に大切な財宝のために、一つ取りこぼれるなら何を切る?」
「それとも初めから迷いなんて無かった?」
―――ディスクオリア、ストーリー3より
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5/0/0/6
儀式剣1、黙祷剣、爆炎剣、爆炎剣、黙祷剣、導来剣0、黙祷剣
「アリス」
振り向くと、片平さんがいた。
「逃げようよ、もう何人も巻き添えを食らって発狂死したんだよ!」
試合の日の後のことだった。
数人の生徒が、おかしなことを叫びながら自殺したようだった。
無理もないとは思った。
明日おおよそ間違いなく勝てないと確信したことを除いても―――
遠く離れていたとはいえ、あの死技野さんを見たときの印象は。
「自分が餌になる」という感覚だった。
殺される、勝てない、ではなく、「餌になる」だ。
また数人の生徒はこの事態に対して、聖域からの脱走をした。
既に脱走をした生徒のうち、やはり何人かが自殺をしていたという
報告も受けていた。
試合後、たゆみ先生からはこっそりと忠告を受けていた。
「あなたが死んだあと私たちも無事かどうかわからない」
「試合を辞退することも私たちは受け入れる」
「ここで死んでも、あなたは蘇生できないかもしれない」
あれがカシュラミネーション、という現象だということも聞いた。
私は彼女の肩を両手で掴んだ。
「どうしても怖かったら、私の部屋にいていいよ」
片平さんは予想通りというか、何と言うか、きょとんとしてしまった。
「片平さんは言ってたよね。元気になってほしい、真っ直ぐな目で見てほしい、
『傍に居る』って」
(そばにいてほしいよ)と出かかった言葉を飲んで、
軽く頭を撫でたあと、片平さんをベッドに寝かせた。
随分うなされていたが、しばらく撫でてあげたら静かになった。
それからその晩、私は明日に向けたリリースバックと、
覚悟を決めていた。
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カシュラミネーションによる脅威を一身に受けながら、私は立っていた。
私は、私だ。それ以外の何者でもないし、全てでもない。
それが【愚者】という戦法であることを、私は知っていたが…
これで負けても、悔いはない。
「よろしく、お願いします!」
私は一振りの刀を鞘に納めると、構えを取った。
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5/0/0/5
先行剣、先行剣、黙祷剣、黙祷剣、黙祷剣、黙祷剣、反響剣、泡溢剣
スローモーション。
よどみ先生の振りかざした右手のもやが、剣の形を取る。
細めた目がゆっくり、ゆっくりと見開く。
私は後ろを見た。
(交換としてはまるで割に合わないクソブレードだ……が、生贄さえ積めば―――)
鯛良先生の必死な顔がふとよぎった。
挫折感と絶望が、走馬灯を見せたわけじゃなかった。
その為の戦い方を練り上げるための時間が必要だった。
集中して試濁を行いはじめるや、
頭の奥がぼんやりと暖かくなった。
すると私にはより先生の動きがゆっくりに感じられた。
鼓動がいつにも増して大きく聴こえるだけで、
私の思考は恐ろしいほど冷え切っていた。
体感一時間ほどすると、ようやくこの血濡れの武器に頼らない、
みんなを守れる構成を得た。
安堵し、一気にリリースバックする。
手から死技野さんに使った刀は失われ、丸腰になっていた。
「先生」
よどみ先生は再び冷ややかに目を薄め、私を睨む。
「私がどれだけを殺せるのか、と言いましたね」
たゆみ先生と鯛良先生を見やる。
たゆみ先生には、今まで沢山愛情を貰ったと思う。
鯛良先生も殴りはしたけれど、芯が強くて頼りになる先生だった。
刀身だけの剣を前に突き出すと、私はそれを折ってみせた。
「圧し潰すべき策はもうありません。
―――これから先、私が人を殺すのは、あなただけです」
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© Steppers' Stop